中国で大学生の就職難が深刻化しています。2001年に115万人だった大学卒業生は、2006年に412万人、2007年に495万人、2008年に559万人、2009年に611万人と10年を経ないうちに6倍近くに急増しています。こうした学生の急増に職業の提供が追いついておらず、結果として大学生の職業難が発生していると言われています。ただし、原因はそれだけではありません。企業が大学生に対して寛容ではなくなっているという事も原因としてあげられます。
例えば、日本の経済成長を見ると、企業は学生がそれほど高度なスキルを持ち合わせていなくても、育成・投資という目線で採用して、企業内で育てていく事が出来ました。それは、日本の工業全体のスキルが欧米諸国と比較しても高くは無かったので、そうした学生を採用して育成する事で少しずつ高度なスキルを身につけて行けば良いという事になっていたからです。当初、アメリカに輸出された日本車は、高速道路を走ればすぐに壊れるという評判でした。それでも、とりあえず需要はあったので輸出出来たのです。当時の日本車の技術というのは、欧米からみたら大した技術力ではありませんでしたので、それぐらいの技術であれば「高卒から叩き上げ」でも身につけられたんですね
現在の日本企業の場合には、既に世界の最先端の技術を持って、それを更に高度にしていく事によって、世界の競争力に打ち勝とうとしています。その為には、あらかじめ技術力の高い人材を求める傾向にあるという事でしょう。単なる叩き上げだけでは既に勤まらなくなってきており、専門的な知識を持った人材が必要になってくる事でしょう。自分たちは大学時代に十分に遊んで、それでも就職が決まった時代だったというだけなのに、今の世代に大学を出たばかりで技術力とか成熟とかを求めるのは、ちょっとずるいなと思いますけどね。その上に「今の大学生はやる気が無い」だの「向上心に欠ける」とまで罵られたら大学生は怒りたくなるでしょう。
しかしながら、実はこうした職業上の問題に直面しているのは、大学生の就職難だけに現れているという訳ではありません。場合によっては、今まで会社を動かしてきた人材で、職場だけで叩き上げた人材は、知識が不足しているので不要という事になりかねません。次々と優秀な大学生は、実は職場の人材では出来ない知的な作業を担っていく可能性があるからです。職場の経験だけでは身に付かないスキルというものがある事もまた事実で、そうしたスキルが無いと会社が回らないという事が多々発生するようになってきます。経験だけに任せてやっていたのでは、会社の価値が向上せずに先細りという日本企業のような状況になります。
企業側としては、採用に失敗した時の損失が大きくなってしまう傾向にあるので、企業側がリスクを負いたくないという事があります。これは、起業家が起業するのと同じような状況が起きているということです。成熟した市場では、何かをすればお金が入ってくるという状況ではなくて、新しい隙間を見つける事は非常に難しくなってしまいます。企業側としては、新しい隙間を見つけて開拓するよりは、今ある大きな市場を広げた方が簡単に利益になると考えています。実際にはそんなに簡単ではなくて、拡大どころか縮小している方が多いのですけど。
起業家は、スキルが無い時点で起業して、自分の能力で開拓出来る市場を探すというのが通常です。その時点でスキルがあるか、無いかという事よりも、市場があるか、無いかという事の方が重要です。ただし、ここで問題になるのは、本当に市場を探す事が出来るかという事です。市場を探すにも一定の能力が必要になりますので、このスキルが必要になる事は確かだと思います。起業して少し軌道に乗っているにも関わらず、このスキルが無い為に拡大出来ないという企業も数多く存在しています。実際に新しい市場でこのスキルを発揮する事は大変です。例えば、市場は日本国内には存在しておらず、海外に存在しているかもしれない。その場合には海外に営業をかける能力が必要になります。
大学生の時に少なくとも市場の要求に答えられるだけのスキルがあって、市場が見つけられるスキルも持ち合わせているのであれば起業しても良いという事になります。そうでなければ、起業は少し待って、社会人として少し通用するスキルを身につけてから起業という事になるでしょう。社会が必要とするのは、営業力よりも何か実質的なスキル(営業を売りにして起業した会社もありますけど)になりますので、そのポイントが何とかやっていけそう(生活水準を考えてギリギリでも)であれば、起業も選択肢に入ってくると思います。
小さな会社が存在しないという事は、大きな会社も存在しないという事です。小さな会社であったとしても、大企業と同じようなやり方で、同じように成長していけると思ったら大間違いですね。日本経済が衰退している時期に、そう勘違いしている日本の経営者も居ますけど、そういう会社は潰れます。もし、大きな成長をしていきたいのであれば、大企業の下請けばかりを引き受けるのではなくて、大企業とは別の角度で独自の投資を行っていく必要があるでしょう。
30歳を過ぎて、自分が何かを出来るようになってくると、それを出来ない人を批判したくなるものです。若者のうちに生意気だとか、何が出来る訳でも無いのに言うことを聞けとか言う理屈です。そうであれば、中国で30歳ぐらいで会社を作って成功している人は同なんでしょうか。日本では、既に30歳での成功が「若い」と言われますが、中国で30歳の企業というのは、当たり前の年齢です。40歳で起業がむしろ遅いぐらいです。
日本の企業は、もっと若い人の有り余る力を「失敗してもいいんだよ」と言って使わないといけないと思います。たとえそれが起業の損失になったとしても、そういった失敗を恐れていたら、新しい市場は開拓出来ません。日本企業が昔日本でやってきた事を、別の市場で試していく事はできないのでしょうか。かつて、日本人の新卒の1ヶ月における収入は2万円でしたが、今では20万円支払わないと人を雇う事が出来ません。更に海外へ派遣するとなると、更にお金がかかります。現地採用などを上手に使って、お金の単価を下げながらチャレンジさせるなどの「柔軟なシステム」を考え出す必要があると言えます。
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