ロイターなど複数の報道期間が個人投資家による口座開設の急増を伝えています。ロイターによれば、マネックスグループの松本大社長の話として「個人投資家からの証券口座の開設の申し込みが通常の5倍程度に急増しているという現象が起きている」という事です。ロイターや他社の新聞でもまるで個人投資家が市場に戻ってきたような書き方をしていますが、実際にはちょっと違うんじゃないの?と思うところがあります。
手数料が高い「対面営業」をもう嫌になった個人投資家がネットに移行しているんです。
対面営業の手数料は1回の取引あたり当たり数千円から数万円とネット証券と比較すると数十倍の高額です。手数料が高額であるにも関わらず、実際に対面営業にしたから利益が出るわけではなくて、逆に損失を増やしている人が多いという事実があります。高い手数料を支払って、損失を出したのでは割が合わないので、それならば「自己責任でネット取引した方がマシ」という考えの個人投資家は増えています。
何故、個人投資家は対面営業が嫌になってしまうのか?その秘密に迫ります!!
先ず、日本の証券会社のビジネスモデルじは、対面営業で稼ぐ手数料が大きなウェートを占めています。高度な投資銀行業務でバンバン稼ぎ出すアメリカやイギリスモデルとはやや異なった古いビジネスモデルが健在です。日本の最大手である野村證券や日興證券もしっかりこの古臭いビジネスモデルで頑張っています。山一證券が潰れた後に山一の個人部門を買い取ったメリルリンチ証券は、この古いビジネスモデルを上手に扱う事が出来ずに、日本から撤退する事になりました。古臭いビジネスモデルの代表は「飛び込み営業」で、大手証券であっても未だに健在です。
証券営業マンは、朝7時前には出社して新聞を読みまくり、ネットを検索しまくってその日に使えそうなネタをピックアップします。それを切り取ってコピーして、朝8時頃から開かれる証券営業マンによる朝会などで発表して、お客さまが興味を持ってくれそうな情報(悪く言えば騙せる情報)を全員で共有します。場が開く前の8時半頃に慣れた(つまり電話しても良いと言ってる)お客さんに電話を開始します。今日はこんなニュースがあって、この銘柄を買うべきですとお勧めする電話を徹底的にかけまくります。昼間は、忙しい日には机に張り付いて注文を取り次ぎ、暇な日にはお客さんと約束を取り付けて訪問します。芸能人が住んでいる高層マンションや赤坂のオフィスなどがあれば、説得力を上げる為に同僚や上司を連れて行って、2人がかりで説得しに行きます。映画「ウォールストリート」でバドファックスがゴートンゲッコーに証券を売り込みに行くシーンと同じです。
お客さんが儲かろうが、儲かるまいがそんな事は知ったことではありません。営業成績は、どこの証券会社でも「預かり資産」と「手数料」によって評価されるシステムですので、とにかくお客さんからお金を引っ張り出して来て、銘柄を売ったり、買ったりするのが仕事となります。銘柄を一回購入して貰ったお客さんには、損をしたら「買い増し」を勧めて、得をしたら「更に儲かるように」という事を勧めていきます。お客さんから資産を出来るだけ多く預かってきて、沢山お買い物をさせた人の稼ぎが良くなるシステムとなっています。
先ず、相手の金融資産を良く把握して、それを出せる所まで引き出します。大抵の場合には、お客さんが貯金をいくら持っているか何て分かりませんので、最初300万円買って頂いたとして、次に500万円、続いて1000万円と相手が持っている資産が幾らであるのかを試して買いを勧めます。相手から引出せるまで引出して、もうこれ以上出せないという所まで来れば、それからは銘柄を売ったり買ったりという事を勧めて手数料を稼ぐ事になります。
証券営業マンが情報に精通しているかと言えば、把握出来る情報はニュースからなので、得ている情報自体は個人投資家と何ら変わる事がありません。インターネット上に情報が掲載されるスピードが速まっており、営業マンから断片的な聞くニュースよりも、インターネットで大量の情報を仕入れて自分で売買する方が良いという人が増えてきました。対面営業を利用するのは、インターネットを使いこなせない40歳以上のお金を持った高齢層の方々であり、彼らは証券会社の言われるままに損失を抱えやすくなっています。最近では、彼らでさえネットを使う人が増えていると言われています。
日本は、サブプライムローンに始まる金融危機でダメージが少なかったと言われていますが、その理由はこの「古臭い営業スタイル」が健在であった事であると言われています。米国や英国に見られる華やかな「投資銀行業務」は、大手証券会社の一部(野村、日興、みずほなど)が米英に比べると小規模な範囲で行っているに過ぎませんでした。米英の投資銀行業務が壊滅的な打撃を受けて再起不能となり、更に投資銀行業務の規制強化すら叫ばれる中で、米英の証券会社の今後の業績は絶望的と言えるでしょう。
証券会社の主力である対面営業はネット証券にどんどん移行して「薄利多売型」が証券業務の衷心となりつつあり、その上に投資銀行業務ですら最も儲かりそうなCDSの取引などに規制がかかるとすれば、証券会社が利益を生むビジネスモデルが新たに構築されない限りは、既存の証券会社は非常に厳しい状況に置かれる事になるでしょう。薄利多売型のネット証券では、大手証券会社が今までのように利益を取り続ける事は非常に困難となります。ネット証券口座の申し込み急増は、日本の古臭い証券会社がこれまでのビジネスモデルでは非常に困難な状況に陥っている事を意味しています。
逆の考え方をすれば、貯蓄から投資の流れが一向に進まないのは、こうした証券会社が新たなビジネスモデルを構築出来ないからであるとも言えます。個人は、お金を保有したとしてもどこに使うか分からないというのが正直な所であるかと思います。個人投資家は、お金にどのような使い道があるのかを全く分からない状況です。あるのは単に将来に対する不安感や年金に対する不信感などであって、現金で保有する事に安全・安心を感じています。
対面営業は今後もどんどんと衰退していき、逆にネット証券は更に口座数を増やしていく事が考えられます。人々は証券会社からの連絡を待つのではなくて、自分のインターネット上などのネットワークを駆使していかに儲けるかという事に関心が移っていくものと考えられます。
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