そもそも中国本土に上場している企業で株価が下落しているのは万科企業だけではなく、その他の企業も大幅な下落を被っています。中国経済がGDPにおいて10%近い成長を続ける中で、2002年から2005年11月頃まで続いた中国本土市場の株価下落を考えると、現段階においては、中国本土市場の株価と経済が一体化していると考える事自体に相当な無理があります。万科企業が下落したのは、不動産市場がバブルかどうかというものとは関係が無く、中国本土市場の調整の中で発生した事であると考えられます。
先ず、中国において主に不動産を購入する層を考えてみます。中国で不動産を購入する層は、家を持たないと結婚出来ないと言われる中国の伝統も手伝って、25-35歳ぐらいまでの若い層と考えられています。日本を考えると年功序列の中で若者の給料は一律に低いので、大半のサラリーマンが35歳以降にやっと家のローンの頭金が払えるという場合がほとんどなので、私の友人でも25歳で家を購入した人は皆無です。しかし、中国では若いうちから給料に大きな格差がある事と、所得に対して生活費が低い事から可処分所得が高くなる事、両親が大半のお金を支援して結婚前に家を買ったりします。この中流階級の若者が郊外の比較的低予算の不動産を購入しており、万科起業がスポットを当てたのもやはりこれらの層でした。
中国の不動産においてキーとなるのは、中流階級であるこれらの層の消費意欲になります。彼らの消費水準を見る為に、都市部における1人あたりのGDPを考えると、1990年の段階においては僅か694元であったものが、2000年頃に約2000元に到達し、2005年の段階で既に約3000元に達しています。2007年に広州市は既に中国の都市で初めて1万ドルを突破しており、上海も万博が開かれる頃にはこの水準に到達すると見られています。この平均的な指標であるGDPが停滞に入らない限りは、不動産業界も「崩壊」と言われるほど大きく崩れる可能性は少ないと考えています。
この層とは違った富裕層向け住宅を購入する層も存在します。Bestlife(香格里拉)という雑誌(2008年5月)によると、年収が100万元(1500万円)以上の人は、約500万人であり、年収が30万元(500万円)から100万元(1500万円)の人もおよそ5000万人ほど居るそうです。調査したLv Xiao教授によれば、中国の"新富階層"は、25歳から50歳の間であり、起業したり、知識階級であったり、投資で成功したりと様々で、必ずしも高等教育を受けておらず、中国の三高に当てはまる訳でもないそうです。(2007年9月から復旦大学管理学部のLv Xiao教授とフランスのESSEC商学部の教授の調査)
これらの富裕層は、あり余るお金を投機用として複数保有して賃貸などに当てています。富裕層が不動産を複数保有して賃貸に当てる様子は、NHKの激流中国第一回の富人と農民工にも紹介されています。アメリカが低所得者向けにスポットを当てて住宅ローンを組ませて住宅用の不動産を中心に販売してきたのに対して、中国の住宅について言えば、主に若年の中流階級が住宅用として購入しており、一部の富裕層が投機用の住宅を購入しています。
中国の富裕層は、もともと賃貸として利用出来るような投機用住宅を好むので、なるべく都市部に近くて確実に借り手が付く不動産を好んで購入する傾向があります。そうすると、もっぱら富裕層の住居用の購入対象となっている郊外のベッドタウンのような住居用物件は、本来の投機としてはあまり適していない事になります。しかし、これから郊外に開発が進むと考えると投機用の物件としても価値を持つと考えられます。
テレビで取り上げられた上海の郊外に位置している「上海テムズタウン」と呼ばれるイギリス風の建築のニュータウンは、富裕層が全て買い占めてほとんど埋まっていると居ますが、実際に住んでいるのは15%ほどだそうです。テレビで紹介されたのは2年前に完成したのに、ほとんど住人が居ない住宅地でした。この住宅地物件はそもそも富裕層が余ったお金で投機用に買ったものであり、あまり経済には関係無い物件であると考えられます。金が余ったので、レジャー施設を金持ちが買ったという感覚でしょう。
結論を言えば、万科企業が下落したのは、市場が下落した為であったと考えられます。中国本土株式市場は、やはり発展途上国の域を出ていない市場であり、たとえ優良企業であれど市場に左右されやすくなっています。逆に言えば、優良企業でなくても市場に左右されて上昇したり下落したりするので、見極めないと非常に危険です。投資する時は「優良企業を選んだ上でトレンドで購入する」ことになるのではないでしょうか。少なくとも万科企業は、中国本土株の中では優良企業に分類されると考えられるので、安くなったら買っておいてじっと待つのも1つの投資方法かもしれません。
中国に異変が・・・
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